滑川裕大
代表焙煎士
やまのべ焙煎所 代表焙煎士 滑川裕大
- 焙煎士になったきっかけを教えてください。
- コーヒーの仕事に本格的に携わりたいと思ったのは、大学卒業後、英語教師として英語をもっと勉強するために訪れたオーストラリア、シドニーの地でした。
コーヒーへの探求の始まりは、大学在学中に留学したイギリスで初めてコーヒーをおいしいものだと知ってからです。帰国後、日本のカフェで働くようになりました。英語の教師になるという夢の傍ら趣味でコーヒーがとても好きになっていったんです。
そんな大学生活が終わり、英語の教師の免許を無事取得した私は英会話能力がないことを自覚し、オーストラリアに語学留学しました。オーストラリアの地で出会ったコーヒーカルチャーはとても壮大で、かっこよく、バリスタになりたいと心震わせるのでした。
帰国後、英語教師の夢はバリスタになるという夢に変わり、東京、銀座のカフェに入社しました。
そこで初めて焙煎に触れ、コーヒーの知識を得たい一心でCQI認定のQアラビカグレーダー、SCAJアドバンスドコーヒーマイスターなど様々な資格を取得しました。
しかし、焙煎は中々うまくなる兆しはなく、路頭に迷う日々が続きました。
なぜなら、焙煎というプロセスのみを追いかけ、焙煎という科学に目を向けていなかったからです。
あるとき、焙煎士の仲間が論理的に焙煎を説明してくれる機会があり、本当の意味で初めて焙煎への道が開けました。
今でも鮮明に覚えている出来事です。
プロセスだけではなく焙煎の科学というポイントを通して、多くの方にコーヒーの楽しさを知ってもらうため今日も焙煎士として活動しています。 - 焙煎とコーヒーの味作りについて。
- コーヒーの焙煎を始めて思ったことは、飲みやすいコーヒーと飲みにくいコーヒーがあるということでした。
浅煎りや深煎りなど焙煎度合に関わらず、ゴクゴク飲めるコーヒーと、そうではないコーヒーがあり、前者をどのようにすれば作り出すことができるのかということを追い求めてきました。
なぜなら、おいしいと思う基準はお客様によって異なるからです。ならば、おいしくないなと思うコーヒーを排除していくことで、おいしいコーヒーというものが生まれるのではないかと考えています。
おいしくないと思う原因は阻害要素と言われる渋みやえぐみが関係しており、焙煎が適正ではないときにそれが出てくることに気づきました。味わいをみて、それを焙煎のプロセスに落とし込むことで、おいしいコーヒーに出会うことができてきました。
例えば、酸味が強すぎる場合は全体の焙煎時間を少し伸ばし、豆が1回目に爆ぜてからの時間も長く取ることで、柔らかな酸味と甘さを作り出すことができます。
そういう焙煎を心がけると同時に、シングルオリジンは個性を引き出し、シングルオリジンの個性を知った上でブレンドを配合することで、今までになかったコーヒーの味わいをみなさまにお届けする事ができると信じています。 - 焙煎機、ギーセンについて。
- 焙煎士として、様々な焙煎機と触れ合う中でギーセンは浅煎りを焼くにも深煎りを焼くにもストレスなく焙煎できることが分かってきました。
なぜなら、ガス圧の調整に加え、排気、回転数のコントロールをできるマシンだからです。
ギーセンのマシンを使い始めて間もない頃思ったのは、ガス圧を上げてテンポよく焼いていくということではなく、焙煎機の釜にしっかりと熱を伝え、蓄熱によって焼いていくイメージだということでした。そのため、どのタイミングでどのようにガス圧を調整するのかがとても重要になってきます。そこに、排気をコントロールし、浅煎りであれば熱をしっかりと伝え、深煎りは伝え過ぎないように心がけています。
繊細な豆に関しては、釜の回転数を変化させます。回転数を早くして、熱風で焼いたようにきれいに仕上げるか、回転数をゆっくりにし、釜から伝わる熱を中心に焙煎を仕上げるかに関して豆によって見極めます。
ギーセンは特に熱伝導が良く、浅煎りを焼いてもきれいなフレーバーと滑らかな質感を形成することができます。排気をコントロールできるので、深煎りにも対応でき、狙った味を作りやすい焙煎機です。 - 焙煎士として次なる目標を教えてください。
- 次なる目標は、バリスタ、ロースターの地位向上のため、知識や技術を伝えるプラットホームを作ることです。
コーヒーの知識や技術は部分的に教わることが多く、感覚的な要素がとても多いと常に感じていました。そのコーヒーの情報を科学的に、尚且つ体系的に学べる場所がありませんでした。
そのために多くの時間を費やさなければならず、時間を費やさなければ、おいしいコーヒーを作れないと言われてきました。そこで、コーヒーの知識・技術を体系化し、バリスタ・ロースターが回帰できるプラットホームを作ることが次なる目標です。